馬のひとみ そして風のうた

 大晦日。街が静かだ。今年が終わる。月刊誌を買ってくれていた人たちには年賀状くらい出さないとと思い 書いていたが、12枚で敢え無く力尽きてしまった。書いてはいるものの、誰の顔も、誰の声も浮かんでこない。 12枚の葉書には、12頭の馬を描いた。馬の瞳は、どうしてあんなに澄んでいるんだろう。あの澄んだ瞳には、 一体何が映っているんだろう。僕のかなしさ、むなしさ、さみしさは、きっと馬の瞳には映らないんじゃない だろうか。そう思うと、なんだか少し恥ずかしくなってしまって、走り出さずにはいられない。こどもが 描いた絵みたいに、ただ空が青く、ただ草が緑で、太陽が赤い。そこに人間をひとり描く。余白があれば、 もうひとり描く。きっと馬の瞳には、子どもの頃にクレヨンで描いた絵のような景色が純然と ひろがっているんじゃないか。そしてその景色の中を風の音だけを聴いて走るだけなんじゃないだろうか。 僕はいつの間に、風の歌を忘れてしまったんだろう。それだけだったのにな。明日起きたらば、 目がツルンツルンになるまで洗って、赤と青と緑のクレヨンをポケットに入れて、 のぼりたてのお日さまを描きにいこう。